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さて。
彼は一体、どこの誰なのだろう?
ようやくまともに向かい合った彼を私は見つめる。
さっき多分男、と言ったのは何の間違いでもなくて、その面立ちがどこか少女じみていたからだ。
くしゃくしゃっとした猫っ毛は光に透けそうな薄い栗色で、肌も積もりたての雪みたいに白い。まつ毛が長くて、鼻筋もきれいに通っていて、歪めた唇の形もいい。
渋谷なんかを歩いていたらすぐにスカウトされるんじゃないかってくらい、整った顔をしている。
半袖のシャツから伸びる腕は棒みたいで、全体的に華奢だが、骨格は確かに男のそれ。いや、まだ男、じゃないな。
ふと、開かれた瞳は髪と同じ薄い茶色。
子犬のようなくりっとした瞳は母性本能をくすぐった。
私より確実に一回り以上下だろう。少年は私に言った。
「えと、ごめんね、今和泉さん。その、大丈夫? こんなところで寝てるから、俺、びっくりして。ほっといたらこのまま干からびちゃうんじゃないかって、心配になって、声、かけたんだけど……」
一瞬口ごもって顔を赤くしたが、少年は続けて私に尋ねた。
こんなところで寝てたら干からびる?
そういえば、やけに暑い。いつの間にか汗だくになっていることに気づいた。目の前の少年も汗をかいている。空を見上げれば、雲一つない青空。びっくりするくらい、いい天気だ。太陽がやけに眩しくて、強い日差しが降り注いでいた。
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