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明治発熱 零
鷹雄が初めて女を知ったのは16の春である。
女といっても相手は15の小娘で、中身はしごく他愛ないものだ。ままごとの延長のように肌を重ねてはみたが、ほとんど子供の遊びに過ぎなかった。
やがて鷹雄が地元房総を離れ帝都の高等科へ進学を決めると、同時に細い縁も切れた。
だが一度知った柔肌の味は鷹雄を狂わせる。
親に嘆かれぬ程度の学業こそ納めたが、帝都で鷹雄が学んだ諸事はまったく褒められたものではない。
心中の果てにひとり生き残ったあや付きの女給しかり、旦那が他所に女をこさえて足の遠のいた人妻しかり。
日清戦の勝利に沸く都会の片隅で、隠れるように生きる女たち。そのすいも甘いも噛み分けた、いかにも翳のある女の色香が、鷹雄の背中をぞくりと粟立たせたのである。
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