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店主はにっこりと笑った。
特別と言われると気になる。せっかくだから、どれか一冊買ってみよう。
でも、表紙もあらすじもなく、どうやって選べばいいのものか。
碧衣は腕を組んで考えあぐねた。
「お嬢さん、悩む必要はありません。ここは他の店と違って、人が本を選ぶのではなく、本が人を選ぶんです。中を歩き回るといい。そしたら、向こうから来てくれますよ」
向こうから来るだなんて、本がのこのこ歩いてくるわけでもあるまいし。
碧衣はとりあえず、言われた通り店の中を歩き回ってみた。
まずは1階をぐるっと一周した。しかし何も起こらない。次に2階に上がり、また一周した。だがやはり、何も起こらない。
3階に上がり半周進んだところで、もう諦めかけたその時だった。
目の前にいきなり一冊の本が落ちた。正確には、本棚から一冊の本が飛び出してきた。
碧衣は突然のことに驚いだが、そーっとその本に近づき、拾い上げた。
それもやはり表紙が無地で、黒い本だった。なんだか不気味な色だ。
「どうやら、見つかったようですね」
下から店主の声が聞こえた。柵から見下ろすと、店主がニコニコ顔でこちらを見上げていた。
きっと彼は手品が趣味なのだ。
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