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「バス停に着いたのはついさっきだけどねー。調べてたんだよね、キミが泊まってるホテルと最寄りのバス停。いやあ、来てくれて助かった」  依頼先の組織の連絡との齟齬。感づいた蜻蛉がすと目を細めたのと、猫が納得顔でうなずいたのはほぼ同時だった。 「あ、もしかしてガセネタ掴まされたか。説明する手間が省けたかな。ハメられたんだよ。キミ、どっかの組織に雇われてない? 私らを標的にしてさ」  湿った雨音に猫の声が弾む。 「そこってさー、どうも賞金首の懸賞金で荒稼ぎしてるとこみたいでさ。キミもそういう筋書きになってたんじゃない? 『犬猫に返り討ち』ってさ。私ら、いいように使われて腹立ってるワケよ。ちなみに偶然私らにも、その組織とは別のとこから依頼が来ててね。キミを標的にした依頼が」  だからさ、と猫はフードの下で獰猛に笑む。 「ちょっくらその組織に、派手に仕返ししてやろうかと思ってね」    /  傘の下で銃弾が爆ぜた。 「おっととお!」  蜻蛉の腕の動きにいち早く気づいたのが幸いだった。近距離どころか無距離の銃撃をすんでのところでかわし、猫は傘の外に転がり出る。 「おいおいおい急だなおい!」  非難がましく言っている間にも浴びせられる銃弾に、尻尾を巻いて暗闇に紛れる。蜻蛉は傘をその場に残し、猫が誘導しようとしていた立体駐車場に自分から入っていった。逃げなかったところを見ると、猫はこの場で片づけるつもりらしい。
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