第12話 うっかり

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第12話 うっかり

 入学してから半月が過ぎた。 初めは大変なことだらけだったけど、今では大分慣れてきた。 勉強は数学が苦手だけど、他の教科は8割近く理解できた。 校内も来て一週間は壮大な迷子を繰り返したが、今では地図を見ることなく目的地へたどり着くことができる。 そして何より一番変化が大きかったのは友人関係だ。 飯倉さんと内田さんとの交流をきっかけに他クラスの生徒とも会話する機会が増えた。 実に有意義な生活をしていると我ながら思う。 今日も友達と買い物へ出かけ、今帰宅中だ。 俺はマンションのカードキーをかざそうとして 「―!」 室内から違和感を感じた。 俺はロックを解除しリビングへ向かう。 するとどこから入ってきたのか黒猫がチョコンと座りながら俺を見つめていた。 「使い魔か?」 ただの猫ではない。微かだが魔力を帯びている。 恐らく王国直属の情報部からの使いだろう。 「・・・・・・」 使い魔だと分かった瞬間、俺の頭には走馬灯のようにここ半月の記憶が流れてきた。 「カラオケ行かない?」 「カラオケ?」 数時間後 「イエーーーイ!!」 「ゲーセン行かない?」 「ゲーセン?」 数時間後 「大量ゲットだぜーーー!!」 「ボウリング行かない?」 「ボウリング?」 数時間後 「よっしゃーーーストライク!!」 ダラダラと冷や汗が滝のように流れ出る。 (・・・忘れてた) ここ毎日楽しいことの連続で従来の目的を完全に見失っていることに今気が付いた。 「連絡が怖いなぁ」 この地に転移してから一度も連絡を取っていなかったのでしびれを切らせて使い魔を送ったといったところだろう。 俺は両手に抱きかかえるウサギのぬいぐるみをそっと床に置き、黒猫に意識を集中させた。
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