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第13話 行動開始
「ジンティス様、国王陛下が経過報告を求めておられます。」
女性の声が脳に直接聞こえてくる。黒猫を介しての念話だ。
どうしよう、なんて報告しよう。
いくら記憶を遡っても遊んだ記憶が鮮明で、というより遊んでしかいないから当然のだけれども。
ここは上手く誤魔化すしかない。
「こちらジンティス、過去の発生地へ向かうとわずかではあるが魔力の残留が確認された。しかし逆探知するには範囲が広過ぎて苦戦してるところだ。」
デタラメにもほどがある。
「なるほど、報告がままならないほど追い込まれていたのですね?」
あ、これいけそう?
「そうだ、精密な作業であるが上に連絡まで気がまわらなかった。申し訳ない。」
「謝罪しなくても大丈夫です。それよりも無事なようで何よりです。」
・・・なんか少し心が痛むのは気のせいだろうか。
「ご多忙とは存じますが、可能な範囲で報告の方を忘れないようにお願いいたします。」
「了解した。」
念話が切れる。
と同時に黒猫は鳴きながら窓と俺を交互に見つめる。
外へ出たいのだろう。俺は窓を開けて黒猫をベランダに出してあげた。
「さてと、いい加減に任務に戻らないと。」
この半年の空白は大きい。
俺は左腕を肩の高さまで伸ばし目を閉じる。
『――――――』
俺の姿が女性から男性のものへと変化していく。
俺は制服を脱ぎ捨て、戦闘用の服装へ着替える。
黒のインナーに上下紫と黒の迷彩服。
腰回りにベルトに通すタイプの小さな黒皮ポシェットを装着する。
「これでよし。」
俺はベランダへ出て黒の軍用ブーツを履く。
思ったらすぐ行動する。
明日から頑張る、が最も愚策であることを自分で証明してしまったからだ。
「まずは学校へ侵入。そして不審物を途中で見つけ次第排除する。」
俺は気を引き締めてベランダから飛び降りた。
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