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第1話 転性への手引き
ある日の事
王座の間にて神妙な雰囲気が流れていた。
「・・・申し訳ありません国王、おっしゃっている意味がよく理解できません。」
若干引き攣った表情で佇む少年。
紺青色の髪に紫の瞳、悪戯っぽさの残る少年顔で低身長。
どう見ても小学校高学年、お世辞でも中学生には見えない。
そんな彼を不思議そうに見つめ
「そうか、ならばもう一度説明しよう。」
王座へと座っている男性が口を開く。
ジール=アラクトス、この魔導国家における現国王である。
「知っての通り、この世界以外にも複数の次元が存在する。ここまではいいな?」
「はい、『並行世界』の概念ですね。」
「その通り。我々にはその別次元を閲覧、転移する術がある。だが―」
「―決して次元崩壊を招く行為はしてはならない。」
ジール国王の言葉で少年の目つきが鋭いものへと変わる。
彼の力の籠った声にジール国王も深刻な声色で話を続ける。
「しかしその別次元であるニホンという地において、膨大な魔力反応が検知された。記憶が正しければその地には魔導は存在しないはずだ。」
ありえない、と言いかけたところで少年はその言葉を飲み込み沈黙で返した。
普通なら起こり得ない事態だと承知で国王も話しているはずだ。
国王とは短い付き合いではあるが決して悪い冗談を言わない。
つまり
「『主天六導』第2位、ジンティス=エスタルカよ。」
国王の言葉に少年ジンティス=エスタルカは背筋を伸ばす。
「本日から3日後よりニホンへ赴き、事態解決へと尽力せよ。」
「はっ!」
そう、これこそが自分に与えられた使命。ここまでは理解できたのだ。
だが
「そこで女子校生として身分を隠すことを命じる。」
「そこです国王!」
間髪入れずにツッコミを入れる。
「潜入するのは分かります。ですが何故に性別を変える必要があるのでしょうか!?別に男性のままでも問題ないと思うのですが!?」
「よいではないか、お主だって以前「青春したい・・・」とぼやいていたではないか。」
「なっ!聞いていたんですか国王!?」
ジンティスの訴えを無視し、ドサッと大きめな箱を足元へ置く国王。
そこには黒ペンで「制服(女性用)」と殴り書きされた段ボールと案内パンフレットが。
「もう手遅れだった!!」
こうしてジンティスのニホン生活が始まるのであった。
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