第2話 転移

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第2話 転移

 ニホンと呼ばれる地。 ここでは魔導は空想上の存在で、人々はその力を宿してはいない。 その代わり、科学技術が飛躍的に発達した世界だと聞いている。  俺がニホンに転移したのは数時間前のこと。 いざ町を探索すると金属の箱が高速で移動していたり、手のひらサイズの板を眺めながら歩く通行人など、不思議な光景が広がっていた。 服装はあちらと似ているがどこか違う風にも思える。 この世界についての情報は心もとないが無いわけではない。 先ほど「ねえちゃん可愛いね、これからどう?」と体を触ってきた中年男性を少々痛い目に遭わせ、この世界の常識を聞き出すことに成功した。 特に女性に関する内容が豊富だったことは幸運と言える。  今俺は住まいとなる家に向かっている途中だ。 国王の(勝手な)手配により戸籍をはじめ、身分証明や住居、金銭は準備されていた。 あとは生活必需品だが定期的に輸送してくれるとの話だ。 「ここだな。」 周囲の建物よりも遥に高い高層マンション。その一室がニホンでの滞在場所となる。 カードキーを扉にかざし、ガチャっとロックが解除された音が聞こえる。 部屋に入り一番大きな部屋へ向かう。 まだ電化製品も家具もない殺風景な空間に、二つの段ボールだけが置かれていた。 一つは忌々しい女性用の制服や体操着、部屋着など衣類である。 そしてもう一つには赤い字で「取扱注意」と書かれている。 「なんだろ?」 気になり開封すると数枚の封筒と一つの布袋が入っていた。
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