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第5話 初登校
私立大三日月高校 2-1 教室
俺は緊張を胸に教室へ入る。
先生に誘導され黒板にこの地での自分の名前を板書。
カッカッと無機質な音だけが教室に響き渡る。
チョークを置きみんなの方を向くと、誰もが動揺を隠せない様子でこちらを見ていた。
「みなさん初めまして!今日から転入してきました、陣地瑠香です!」
リアクションはない。
「おr、私はまだ引っ越したばかりでこの町のことをあまりよく知りません。もしよかったら色々教えてください。どうぞよろしくお願いします!」
俺は一礼すると、盛大な拍手が教室を包み込んだ。
よろしくー!とどこからともなく聞こえてくる。
(どうしてこうなった)
俺は今だに女子として生活しなければならない理不尽さを受け入れられなかった。
いや、受け入れたら男として大切な何かが失ってしまう気がする。
「では陣地さんの席はあそこで。」
先生が指したのは一番後ろの端の席。
「何か分からないことがあったら隣の新城さんに聞いてください。」
クラス全員の視線を感じながら、俺は自分の席へ向かう。
「よろしくね陣地さん」
優しそうな女子が声を掛けてくる。
恐らく先生の言っていた新城さんは彼女のことだろう。
「よ、よろしくね。」
俺は当たり障りのない返事を返して席へ着いた。
「では連絡をいくつかします今日の5時間目は―」
先生が連絡事項を話し始める。
こうして俺の陣地瑠香(♀)としての学校生活が始まるのであった。
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