序章.誰かの決意

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序章.誰かの決意

────どうして それ以外、考えられなかった ────どうして 目の前が真っ暗になった 同時に、真っ赤にも染まる 絶望 怒り 憎悪 ────悲しみ 恨みなど、一度も抱いたことはなかった ただ己の無力さだけが許せなかった 言葉を交わすことも 触れ合うことも 相見えることも 傍で支えることも もうできないのだと その事実に胸が痛んだ ────どうして それでも良かった ただ生きていてくれたなら 別の誰かと愛し合って子を成しても ただ、生きて、幸せでいてくれたなら ────どうして 初めて憎いと思った 許せない、と その死を悼み、残りの人生を死後の平安を祈ることも考えた けれど、それよりも ────愛しい人よ あなたの傍にいられなかった代わりに傍にいよう あなたを守れなかった代わりに守ろう 残りの人生全てを、あなたの愛したものに捧げよう ────あなた以外の誰かのものになることを、許して欲しい
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