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「シェナイ、デニズに……ごめんなさいと……」
「何を謝られることがありましょうか!」
シェナイと呼ばれた女性は悲鳴めいた声を上げた。
女王は諦めかけている。もう己は助からないと。
普段の女王の気丈さを知っているだけに、その事実が恐ろしかった。
今このイシュク王国にハーリカ以外の王族はいない。
王家の血を引く者は幾人かいるが、それらは全て男子であった。
イシュク王国は千年の歴史を持つ大国だ。
初代女王は大地の神に深く寵愛され、神の代理人としてこの国土を任されたという伝説が残っている。
伝説の正誤はともかくとして、イシュク王国が大いなる結界により魔獣から守られていることも災害が滅多に起こらぬことも、そして国民が総じて高い魔力を持って生まれてくることも、紛れもない事実だった。
ただ男性の中には自分の魔力に耐えられず死に至る者も少なからずおり、また死なずとも魔法を扱うことが出来ない者も多い。
何故男性だけが死に、魔法が使えないのか。原因は今をもって明らかになっておらず、人々の間では「大地の神が妻と同じ性別の者にだけ祝福を与えているのだ」とまことしやかに囁かれていた。
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