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傷は浅かったが矢に毒が塗られていたらしく、ハーリカは高熱を発し倒れてしまった。
医学神官、通称医官にすぐさま治療をと思ったが、その医官がここにはいない。
いつも側に控えている者は騎士に殺されてしまっていた。
残った者に出来たのは、一番近い町に駆け込むことだけ。
小さな宿屋の一室を借り、町の教会に走り医官を求めたが、運悪く近くの村に往診に出ているという。
急いで迎えに行っても日没までより早く戻ってこれるとは思えなかった。
下がらない熱。荒くなっていく呼吸。
女王がこのまま儚くなってしまったらと、怖くて仕方ない。
(誰か。誰でもいい。魔獣でも罪人でも構わない)
同僚達のすすり泣く声を聞きながら、シェナイは祈った。
(どうか、どうか陛下を助けてください……!)
「シェナイ内宮官長! 医学の心得がある者が見つかりました!」
「本当ですか!? 今すぐここに!」
「は! さあ、入れ」
駆け込んで来た騎士の後ろから現れたのは優しげな風貌の男性だった。年は三十頃だろうか。
くたびれた枯草色の服に、女性達の表情が歓喜から訝しげなものへと変わる。
「医官の服ではないようですが、何者ですか?」
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