*scene:二人の朝

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 いつも通りの時間になった目覚まし時計を止め、ゆっくりと体を起こす。  昨日は早く寝るようにと散々言われていたのでいつもより早く布団に入っていたが、転がりながら携帯を触っていたらむしろいつもより遅い時間になってしまった。  そのせいで、眠い。間抜けな顔で欠伸をしながら大きく伸びをする自分を姿見で確認すると、いやもう本当に間抜けな顔をしてた。  自分のアホ面に飽き飽きしつつも、ベッドから降りてカレンダーを確認する。おっと、馬鹿なことやってる場合じゃない。今日は入学式じゃないか。  入学式などといっても通う校舎が隣になっただけで、中学からの友人もいる。というか殆ど一緒だし、やっぱり当日になっても特別思う事があるわけでもないし、新調した制服だって中等部で使っていたものとの違いなんて雑誌のおまけの間違い探しレベルだとなると、テンションが上がらないのだって致し方ないだろう。大体みんなこんな感じ、しいていうなら俺は身長が伸びたからサイズが大きくなったくらいか。  まー、結局いつもの朝との違いなんてほとんどないもんだ。  相変わらず寝ぼけた頭で身支度をする前に、姿見に映った自分をじっと見てファイティングポーズをとってみる。  特に、意味のある行動じゃあ無い。多分大勢の人、とくに男子諸君は電灯の紐を相手にシャドウボクシングをした経験があるのではなかろうか。  この朝の俺の行動は、それと同じような心理行動である。というか、よくやる。単純に俺が格ゲーとかアクションゲームとかバトル物の漫画とかが好きだから、子どもの頃からのごっこ遊びの延長線でしかないのだと思う。  右手を引き、片手に気を集中。三種の神器のそれに近いけど、多分知名度はちょっと下。 「こおう――」  必殺技を撃とうとした瞬間、勢いよく開けられた部屋の扉によってそれは中断されてしまった。
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