ミルクティー

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 高校を卒業しからもう少しで一年が過ぎようとしていた。私は大学へと進学し地元を離れ現在はアパートを借りて一人暮らしをしている。アパートから大学までは電車を乗って三十分ほどくらいの時間が掛かってしまう。遠いとも近いとも言えないような道のりだが、さすがは都会、電車は一日に何本も通るので意外と不満はない。強いて言えば強風や雨の影響で交通機関が遅れたり、酷いときは止まってしまうことくらいだろうか。その時ばかりは不便さを感じざるを得ないが、そんなことはたまにしか起きないので、いつもは特に不自由なく大学に向かっている。  初めのころは真新しい光景に目を輝かせ行きかう人々の数、交通量、建物に目移りしながらアパートから大学までの道を歩いていたが、数か月も過ぎればそんなことはなくなってしまう。すっかり今では通学路もこのキャンパスも見慣れてしまって、すでに私の日常と化してしまっていた。  大学でも多くの友人ができて、友人たちと一緒に講義を受け、遊びに出掛けたりと充分に大学生活を満喫している。それが今の私の日常。  そして今日も私は大学へ通い講義を受けていた。 「ねえ美織、この後一緒に学食行くでしょ」  講義中のため休み時間のような喧噪がなく教授がマイクを通して話す声が教室中に木霊する。机に座り講義を受けている生徒はペンを走らせ講義の内容をノートに記すが、それはこの場にいる全員ではない。ほとんどの生徒は隠れて携帯をいじったり、教授に聞こえない程度の小声で話しをしたり、まじめに講義を受けているのは一部の人に過ぎなかった。  かく言う私も授業をまじめに受けるタイプではない。机の下で携帯をいじっていたら、隣に座っているの友人の『吉田恵』が小声で声を掛けてきた。 「うん、行くよ。今日は弁当持って来てないし」 私は顔だけを彼女に向け返事をする。 恵とは大学に入ってから初めて仲良くなった女子の友人。入学式の日も偶然隣に座っていた私たちは何気なく会話をし、それから度々一緒に行動するようになった。もちろん他にも友人はいるがその中でも一番に仲がいいのが恵だ。 「じゃあ、早めに席確保しないとね。昼時は混んで席がすぐになくなっちゃうから」 「そうだね。この講義が終わったら、すぐに学食に行こうか」 そんな会話をしながら私たちは講義が終わるのを待っていた。
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