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「おい……嘘だろ」  新聞紙が飛ばないよう、リュックで押さえると、恐る恐る暗闇に足を踏み出した。危険は十分承知だ。でも、だからって、放っておけないじゃないか! 「前島ー! おぉーい、大丈夫かぁー!」  気は急くが慎重に進む。如何せん、月のない山の斜面だ。歩みが覚束ないのは仕方ない。  リュックの場所から真っ直ぐ歩いている筈だが……余り離れれば、元の場所に戻れなくなりそうで不安だ。 「前島ぁ?」  何度目か名前を呼んだ時――。 「……ごめん」 「えっ? うわあっ!?」  突然、視界が回り出した。  顔や手足にビシバシ何かが当たり、身体のあちこちにゴツゴツと痛みが走り――自分が斜面を落下していることだけ、分かった。あっという間の出来事だったけれど、足を滑らせた訳ではないことは確かだ。落ちる直前に聞こえた低い呟きは、前島の声に間違いなく――背中に強く押された掌の感触が残っていた。
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