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ところで、君は芝刈り機がどれだけ優れているか知っているかい?…どうして目をそらすんだ。まさか、私のことをただ草を刈るだけの機械だとは思っていないだろうな?
なっ…そう思っていたのか!?私の素晴らしさはそんなものじゃないぞ!
仕方ない。自慢するつもりはないが、芝刈り機がいかに優れているか君に話してやろう。
まず、このフォルム。美しいと思わないか?太陽の光を反射する赤いボディ、空高く伸びた持ち手。もはや芸術作品と言える境地に達しているだろう。このタイヤもバランスのとれた美しさを持っている。自分で言うのもなんだが、惚れ惚れするよ。
そして、この刃の回転の速さ。きっとこの世界では私の右に出るものはいないだろうな。どんな相手が来ようとも負ける気がしないよ。正直、最近は人間でも倒すことができるんじゃないかと思っていてね。あぁ、もちろんそんなことはしないさ。無意味な殺生は嫌いだからね。
最後に言いたいのは、私の役目のことだ。そうだな…。もし、君の家の庭が荒れ放題だったらどう思う?嫌だろう?だが、私がいれば決してそんなことにはならない。私が通った後には美しく切りそろえられた芝が広がっているからな。今日も午前に一仕事終えたのだよ。どうだい、綺麗だろう?
まだぼーっとしているな。そろそろ慣れてもいい頃ではないのか?では、次は君の話をしてくれないか?そうすればより親密に…。おっと。使用人が来てしまったな。今日はこの辺にしよう。君の話はまた明日聞かせてくれたまえ。それでは。
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