二階から目薬

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 そんな彼女の視線の先に映るテレビの内容はちょうど、長きにわたる軋轢のせいでもはや修復不可能なまでに関係がこじれにこじれていたはずの、日本から遠くて近い某国と、近くて遥かに遠い某国とが歴史的な歩みよりを見せたところ。  確かに世界情勢的には大きな一歩を踏み出したのかもしれない。  しかし、俺の情緒的には貴重な安息日を脅かしてまで話さなければならなかったことを忘れるほどショッキングな出来事ではないのだと強く訴えさせていただきたい。  「いや、だからさ……」  「こういうのってさ、どう思う?」  「……何?」  「こーゆーの。アンタはどう思う?」  ようやく言葉らしい言葉を発したと思ったらまた訳のわからないことを言い始めた。  「お互いの黒い腹積もりだとか駆け引きだとか、歴史に名を刻みたいが為の名誉欲とか色んなものが見え透いているし、必ずしも百パーセント誰もが納得できる結果が出るわけじゃないこともわかっているのに、総合的に見れば双方に若干のプラス査定に偏るからといって握手を交わす、そんな打算と妥協が満載の関係ってどう思う?」  「…………」  こういうのとは、つまりテレビ、ひいては海の向こう側で交わされた一つの握手のことだったのだろうし。  こーゆーのとは、その握手に込められた政治的で世界的で、多義的で広義的な意味合いのことだったのだろう。  「……別に、いいんじゃないか?」  「いい?」     
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