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「俺には政治のことも、一国を背負って立つ人間の重みもわかんないけれど、とりあえず世界が平和に近づくのは悪いことじゃないだろ?」
「……世界って、平和じゃなかったの?」
「そりゃ……まぁ……平和かそうじゃないかと言われれば、たぶん……」
そう、たぶん。
こうしている今でも誰かがアイスやパンさえ食べられずに飢えていたりするかもしれない。
その一つのパンを巡って本気で殺し合っていたりするかもしれない。
サービス残業の方がそのうち正規の就労時間を越えてしまうのではないかという不満が募り。
どれだけ頑張って仕事を取ってきて会社の利益に貢献しているつもりでも、いつクビを切られるのかわからないという不安が常に付きまとう世界なんて、平和なわけがないじゃないか。
「ってゆーか、そんなことはどうでもいいの」
「は?」
「そもそもなんで急に世界平和についてのあっさ~い所感を述べ始めたのよ?」
「いやいや、お前が聞いてきたんだろーに」
「はい?」
彼女は心底から心当たりがないという怪訝そうな声を上げた。
それどころか、テレビに向けていた視線を真っすぐにこちらに向け、俺の正気を本気で心配しているような顔までした。
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