二階から目薬

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 失う、   損なう、    壊れてしまう。  この居心地の良い関係が。   何ら責任も生じない、気ままで気楽な関係が。    今は幾らか交っている人生の道がゆっくりと違え、そのうち互いの顔も見えなくなるほど遠のいてしまったとしても、良い思い出だったとシミジミと懐古することのできる特別な関係が、思い出ごと全部壊れてしまう。  怖い、   恐い、    コワい……。  何も持たない俺がただ一つ。     いつか死に際に、自分の子供か孫にでも誇らしく語って聞かせることができる唯一のものを失くしてしまう。  俺にはとてもとても仲の良い『幼馴染』がいたんだよ、と。    仲が良すぎて、相性が良すぎて、一緒にいると楽しすぎて。  笑いすぎて、怒りすぎて、思い出の一つ一つが眩しすぎて。   好きすぎて……愛だとか恋だとかいう次元では計り知れないくらい大好きで。  だけど大好きすぎて結局、一緒にはいられなかった人がいたんだよ、と。  語る日が、きっと、きっと、きっと……。  「ほ~らよっっと!」  彼女の声がする。       「は?」  聞き間違えるわけはない。    思い出の中でも、追想の中でも、描いた未来の中からでもなく。     
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