二階から目薬

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 「ちょっと聞いてる?」  「あ、ああ……」  「何?寝ぼけてるの?」  「ああ……」  「『ああ』しか言えない機械なの?なっちゃったの?グレー、グレーと自分に言い聞かせなければとてもじゃないけど正気を保っていられないディープブラックな会社に辞表を出す度胸がない代わりについに人間でいることを諦めちゃったの?」  「……ああ」  「ふーん。でもまぁ安心なさいな。アンタが機械の体を手に入れようが、大半を眠って過ごす非生産的な日曜日が唯一の娯楽となりつつある毎日に魂をすり減らしながらそれでも人であることに無様に縋り付いていようが、この絶世の美女がアンタの幼馴染であるという現実に何ら変わりはないんだから。どう?嬉しいでしょ?」  「……ああ」  「とにかく部屋に上がらせて。まだ朝も早いってのに暑いったらありゃしない。階段昇っただけでもう汗かいちゃった。……ああ、そうだ。この前置いていった高いアイス、まだちゃんと冷凍庫に入ってる?私はそれ食べながら扇風機で涼んでるから、その間に顔でも洗ってシャッキリしなさい。それから話、ちゃんと聞きなさいよね」  「…………」     
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