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彼女がのべつ捲し立てた中身のない言葉の羅列は、寝起きの耳から入り込んでそのまま覚醒しきらない俺の頭をフリーズさせるには十分過ぎる殺傷力を持っていた。
「ところでディープブラックってフツーに競走馬にいそうよね?そこそこ勝ってからまずまず優良な種馬としてなかなかな余生をのほほんと過ごしそうな」
「…………」
もはや『ああ』という言葉さえ失くしてしまった俺は、ただズレ落ちそうな自分の眼鏡を指で直すだけの機械と化していた。
☆★☆★☆
俺たちの関係を表す言葉として『幼馴染』以外、他に何があるというのだろう。
むしろ俺と彼女が幼い時からの馴染みだったということである日新語として誕生したんじゃないかと思うくらい、俺たちはどこまでも『幼馴染』だった。
かたや上場企業の社長令嬢、かたや質実剛健な公務員の次男坊。
あまり接点のなさそうな互いの出自ではあったが、そもそも両親自体も幼馴染同士で、家もごくごく近所。
誕生日こそ彼女の方が一日早けれど、同じ病院の同じくらいの時刻、こんな時まで仲良しな母二人が産気づき、かたや午後11:55に女児を、かたや翌午前0:05に男児を無事出産したことで俺たちはこの世に生を受けた。
物心がつく前も後も、俺と彼女はいつも一緒だった。
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