二階から目薬

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 どちらも結局一人っ子のまま成人を迎えたとはいえ、どちらかが大抵どちらかの家にいたことで時に俺は彼女のことを姉のようにも妹のようにも感じ、時に彼女は俺のことを兄のようにも弟のようにも感じて育った。  互いにとって初めて出来た友達であり、悪友であり、本気で競い合うことのできるライバルだった。  互いにとって初めて性差を感じさせられた相手であり、性別など越えた次元で親愛を抱けた対等な相手でもあった。  たぶん、互いに初恋の相手であったりもしたんだろう。  随分と曖昧な表現になってしまうけれど、あまりにも近すぎた距離感のせいで、当時は自分の恋心に俺たちはまったく気が付かなかった。  恋愛の対象というよりも、やっぱり気の置けない幼馴染という色の方が濃く出すぎていたのだ。  あるいは俺の方が先に日に日に女らしくなっていく彼女の身体的変化を意識し始めたかもしれない。  あるいは彼女の方が先に俺の段々と低くなる声や高くなる身長に心をざわつかせていたかもしれない。  もしかしたらその期間が互いに重なっていたかもしれないし、どちらかがそれを『恋』なのだと明確に自覚していたなら俺たちの関係は今とはもう少しだけ違っていたかもしれない。  ……いや、よそう。  あったかもしれない過去の可能性について語りだしたらキリがない。     
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