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ただ俺たちの関係は生まれた時のそれから何一つ変化することなくあり続けているこの現実がそこに粛々と横たわっているだけだ。
そう、すべてはもう過ぎ去ったこと。
彼女から『先輩から告白されたんだけど……』と報告を受けたあの高校一年の夏の日。
彼女の前では適当に茶化したりして笑っていたものの、その蒸し暑い夜に厚手の布団と言い知れぬ喪失感にくるまれるままに夜明けを迎えた過去を。
『ああ、俺はアイツのことが好きだったんだな』と自覚したのと同時に失恋をした初恋を。
なかったことにはできないのだ。
彼女がその彼氏とあっさりと別れた後も、しばらくして俺がクラスメートの女の子と付き合ってあっけなく別れてしまった後も。
またどちらかが別の誰かと恋人となり、長く続いたりしなかったりした後も。
やっぱり俺たちの関係だけは何も変わらなかった。
どこまでも彼女は『幼馴染』として俺のそばにいたし。
いつまでも俺たちは『幼馴染』のままであり続けた。
……あり続けるしかなかった。
☆★☆★☆
「ちょっとぉ、なんで牛乳がないのよ」
顔を洗ったくらいではまともな思考を取り戻せないと判断した俺がシャワーを浴びて居間の方に戻ると、宣言通り扇風機の前を陣取り、高いカップアイスにパクついていた彼女が不満を垂れた。
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