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俺が傾けたグラスの中で氷がカラン、と鳴る音。
そしてなんとなく点けていた情報バラエティー番組のMCが、一週間の世情をダイジェストとして振りかえっている声だけが、気怠くも平和な日曜朝の静寂をざわつかせるばかりだった。
「……で?」
どれくらいそんな風にしていただろう。
満を持して……という程に大仰なものではなかったが、このまま只でさえ今日もまた不毛に終わりそうな休日をより灰色に彩ってしまいかねない無為な時間に耐えきれなくなった俺がついに彼女に尋ねた。
「んん?」
「『んん?』じゃなくて。何か話、あったんじゃなかったのか?」
「……ああ……」
まるで機械化した俺への意趣返しをしているみたいにボンヤリとした気のない返事。
返事をし、トーストを齧りながらも彼女の視線はジッとテレビから離れることはなかった。
朝食への気構えなんて人それぞれだし、お行儀云々などと説教をたれるつもりも毛頭ない。
ただ、それにしたって随分と平坦で、妙に真剣そうな眼差しなのが気になった。
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