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二階から目薬
二階から目薬
【読み】
にかいから―めぐすり
【意味】
物事が思うようにいかず、もどかしいさま。また、回りくどくて効果が得られないことのたとえ。
☆★☆★☆
「ほ~らよっっと!」
それはそれは柔らかな放物線だった。
突き抜けるような青空をなぞるように。
恨めしい真夏の太陽に挑むように。
ポツポツと浮かんだ浮雲をさらうように。
彼女の手から放られたその小さな物体はゆっくりと弧を描き、されど真っすぐに俺をめがけて落ちてくる。
「は?」
俺はその時、一体どんな顔をしていただろう?
きっと驚きで目を見開いていただろう。
あるいは突然の出来事にあんぐりと口を開いていたりしたんだろう。
時間の流れが年老いた亀の歩みくらいひどく鈍重に感じられたような気もする。
逆に走馬燈が猛った競走馬並みの健脚で駆け巡っていったような気もする。
……まぁ、なんにせよ、だ。
ゆっくりと流れいく景色の中で視界に映り込んだのは、俺の間抜け面を見てニヤニヤとする彼女の憎たらしい顔だったし。
走馬燈として蘇った幾つかの記憶の中の大半を占めたのも、やっぱり彼女の笑顔だった。
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