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思わず聞き惚れてしまうほど、美しい言葉の連なり。
優美にして華麗にして、なんと広大で壮大な詠唱なのでしょう。
どんな事象が巻き起こるのか、わたくしごときでは想像も尽きません。
ですが……なんでしょう。
――あの日の夜空を覚えてる。儚く咲いた夜の花。燃えて散るのが定めでも。わたしは散らない花となり。永遠に貴方の中で咲き乱れましょう……――
この詠唱に込められた想いは。
物語の中や術者の感情云々というよりかは、『術』の一文字一文字に込められた想いは。
ただ『貴方』という人ひとりにだけ向けられた想いは。
なんとなく、わかります。
女として……そう、『術』の中に出てくる方と同じ女として、わかってしまいます。
これはひとえに『愛』の詠。
深そうで広そうで、その実、単にたった一人へと向けた『愛』の詠。
ええ、恋ではなく、あくまでも『愛』。
異性としての恋愛感情など軽々と超えた、もっと強くて、最も純粋な単なる愛情。
なんて切なくて、なんと一途な想いでしょう。
なにか抜き差しならない事情があって、傍にはいられなくなった。
いつまでもその右手を繋いであげていたいのだけれど、放さなくてはならなくなった。
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