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【場所は変わって 国立生体生理学研究所】
「 え…! 」
研究室には、行人の素っ頓狂な声が響いた。
森のデスクに呼ばれて、座った森慎也を見つめながら行人は固まっている。
「ーーもう、alphaのDNAサンプルは1000を超えました。データーも揃ってきました。
alphaのDNAの共通のポイントも分かってきました。
その 共通ポイントの数は 36 」
森慎也はデスクを爪で「コンコン…」と叩きながら行人を見つめた。
「ーーその中で最もalphaをalphaと示している 場所を探す為には、
次は“ omega ”の DNA サンプルが必要……
そう述べたのは、君ですよねぇ?」
「 はい… 」
行人は俯き、拳を握りしめながら口を開く。
「 恐らく、alphaのDNAは、 omegaの DNA と対比するように配列しているのではと考えています。
そこが alphaをalphaとするところと思います。 」
「ーーそれなら、omegaのDNAサンプルも、また1000以上必要と言うことですよね。」
「 は、はい… 」
「ーー私が、omegaのDNAを求めて海外へ行くのは構いませんが、omega の方が alphaの私に心を開いてくれるとは思えないのですよ。
しかし、貴方は omegaである 秋くんを 番 としている。
omegaの人も、そんな人の方が心を開きやすいと思うのですがね…
故に、もう一度言いますが、
行人くんが一緒に 海外へ飛んでくれると 助かるんですけどねぇ。」
行人は 渋い顔をして、無言で眉間に皺を寄せる。
「ーー君、研究を早く終わらせて、秋くんのために福岡に戻りたいのでしょう?
ならば、それに向かって、最善の方法を考えて行動して下さい。
賢い貴方なら、答えはすぐに出るはずですよ。
話は以上。 どうぞ、作業にお戻り下さい。」
「 うぅ……はい 」
行人は ため息を吐きながら、自分の作業台に戻った。
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