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行人が 帰りが遅いのには、先輩が帰らないから、帰れないと言うこともあるのだが、
急ぎ研究を終わらせたいと思っているからだ。
彼自身も、いつまでも杉山くんに 佐藤家を任せておくわけにはいかないと 理解している。
杉山くんが、専門学校に行っている3年の間は確実に佐藤家を見てもらえるが、杉山くんが柔道整復師の資格を取り、その後彼がどうするのかと言うことを考えると、この研究を3年間で終わらせることがベストなのである。
その行人の心情を、森慎也は知ってか、知らずか、急ピッチでalphaのDNAサンプルを集めていた。
しかし、次はomegaのDNA…、ある程度は 千尋に頼めば集まるだろうが、国内だけの量では限りがある。
早く、研究を終わらせるためには……
「 はぁ… 」
行人も、森慎也が、自分に対して意地悪で言っている訳ではないと分かっている。
しかし、伴侶はとても可愛いし、息子の成長も見たいし…
彼の頭の中は、
(海外に行きたくない!)
(でも、早く研究を終わらせたい!!)
と言う葛藤で、いっぱいであった。
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pm21:45
「 ただいま、戻りました 」
行人は、愛しい 秋と 晴が待つ 家に帰ってきた。
「ユキ、お帰り!」
お風呂に入り、サッパリとした姿の秋が、晴を抱っこして 行人を迎えてくれる。
行人は 「ぶっ!ぶっ!」と喃語を発する 晴を 秋から受け取り 抱っこをする。
「ん? ユキ、なんかあったか?」
秋は すぐに、行人の表情が暗いことに気づいて、心配そうに彼に声をかけた。
「 あ、あ… ご飯食べながら 話すね… 」
「う、うん…」
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