杉山くん37歳の春

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俺は、緊張した口を潤す為、近くにあった自販機で水を購入してから、ひなたの実家に向かった。 「あぁー心臓のドキドキが、はんぱねぇー」 もちろん今日はスーツなので、いつもそんなに感じないが、ネクタイが喉に当たって気持ち悪くて仕方がない。 すると俺の緊張を和らげるように、 「スギさん!大丈夫です!父はウルトラが付くほど優しいので、そんな緊張することありません!」 「うん、そうだよ。 おじいちゃんの半分は優しさで出来てるから、心配いらないよ!」 と、2人が気持ちを和らげる言葉をかけてくれる。 「そ、そうなの? 晴くん、あとの半分は何で出来てるの?」 「うーんと……たぶん愛です!」 「おぉ〜〜!」 愛と優しさでできてるなんで、美の女神ヴィーナスじゃん! はっ!! 安斎先生、嫌味なこと言うけど、顔は中性的で美しい部類だから、 お父様の顔は、安斎先生みたいな感じじゃね? あっ、そうだよ! そういうことか!! 安斎先生の老けた感じを想像すると、緊張していた気持ちが落ち着いてきた。 よっし、普段通りいける!! ーーーーーーーーーーー 「ただいま〜 スギさん、お連れしました〜!」 ひなたの実家にたどり着くと、彼女は大声でそう言った。 ひなたの実家は想像以上に大きな家だった。 すると、奥からスリッパのパタパタと走ってくる音がして…… 「はーい、こんにちは〜!」 本当にヴィーナスが現れた! 「スギさん、こちら千尋父さんです!!」 ひなたは笑顔で俺に紹介をする。 「…お、おとうさん……」 ヴィーナスは玄関に正座をして頭を下げた。 「よくお越しくださいました。どうぞ上がりください。」 「お、お邪魔します!」
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