杉山くん37歳の春

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……キョウスケさん? 「 お前なに、たるんだ顔してんだ。 そんな気を緩めた状態で、この部屋に入ったら死ぬぞ。 」 「えっ、えっ、あの…キョウスケさんって……」 「 ん? 俺たちの、父親だよ。 」 「えっ、あ、あのさっきのヴィーナスがお父様では?」 俺の質問で「!」と安斎先生は気づいた表情になった。 「 おい、ひなた…… 」 「うぇい?」 志村けんみたいな変な声で返事をするひなた。 「 うぇい?じゃないだろ。 お前なぁ、ちゃんと杉山に両親の説明しとけよ。 」 「す、すいもはん!」 ひなたは、頭を下げて後頭部をボリボリ掻いている。 「安斎先生、ど、どう言うことですか?」 俺は、ビリビリと空気の波動を感じながら、冷や汗がたらりと流れだす。 「 杉山、俺らの両親はalphaとomegaなんだ。 さっきのポワポワしてる方は、omegaの父で、今から会うのは…… 」 「……!!」 アルファの方だー! 俺の “全て分かった!” と言う表情を見て安斎先生は、瞳を閉じて大きく頷いた。 「 いいか、杉山、一瞬たりとも気を緩めるんじゃないぞ。 俺と晴で援護してやるから。 恭介さんに言わなきゃいけないこと、ちゃんと言うんだそ。 」 「…………は、はい…」 この襖を開けたら、俺は、死ぬような気がした。
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