森さんは、心配屋さん

5/5
前へ
/387ページ
次へ
携帯電話を見ながら、秋は下を向きしょぼくれている。 「あきちゃん、どうしたの?」 そんな秋が心配で、晴が秋の服をグイグイと引っ張った。 「…うん、ちょっと森のおじちゃんから怒られちゃった。」 「へへ……」と苦笑いをしながら、秋は素直に片付け始めた。 草刈機についた草や泥を雑巾で拭き終わり、軽トラックに乗せる。 すると、秋が突然「ふふふ……」と笑い出した。 「森さんから 怒られた……」 ーーーーーーーーーー 福岡の専門学校 Buuu……Buuu…… 安斎行人のスマホが振動する。 ポケットから取り出して、スマホに表示されてある名前を見た途端、安斎行人は顔を(しか)めた。 ( なんか、とても嫌な予感がする……今仕事中だから、とりあえず おいとこ! ) 1分くらい放置しておくと、スマホの振動は止まった。 「 ふぅ…… 」 ホッとして肩を撫で下ろす行人。 しかし、次の瞬間学校の電話の呼び出し音が鳴り響き、女性職員が取って対応をし始めた。 そして、もちろん…… 「安斎先生! 森さんと言う方からお電話です!」 「……わ、わかりました…」 安斎行人は、ゆっくりと受話器を取った。 『ーーおはようございます。森です。』 「 お、おはようございます。 学校(こちら)にお電話するなんて、朝からどうされましたか?  」 『ーーどうされましたか、ですか……えぇ、貴方には言うべきことは沢山ありますよ。』 低く冷たく言い放つ慎也の声に、行人は生唾を飲み込んだ。 ( この感じ……、なんか怒られる…… ) 「 は、はい…… 」 その後、秋の倍以上の時間を使い、 『毎年、秋くんに 1人で草刈りをさせるとは、どのような了見ですかねぇ。私に納得いくように説明していただけますか?』 と、責め立てられた行人は、老犬のように背中を丸めて、オープンキャンパスの仕事をするのであった。 end. ps:次の日、森のおじさんから草刈機が2つ送られてきました。 だから今年からユキちゃんとアキちゃんは仲良く2人で草刈りしてます!  byハル
/387ページ

最初のコメントを投稿しよう!

585人が本棚に入れています
本棚に追加