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時は、秋が妊娠中の話
1月中旬
福岡の田舎の駅にそぐわない、男が1人佇む。
ほっそりとした体型に似合うグレーのコート、紐の付いた黒い革靴はキラリと光っており、センターで分けられた黒い髪に、狐の様な瞳。
そして、完璧なまでのアルファのオーラが彼を包む。
そう、彼は『 森 慎也 』である。
彼が電車を降り改札を出ると、目の前には潰れたパーマ屋と潰れた新聞屋、年季の入った居酒屋が並ぶ。
「ーー…ふーん……」
彼は小さくため息を吐いた。
すると自分の名を呼ぶ声が、彼の耳に届く。
「森さん!!」
車の窓を開けて彼を呼ぶ人は彼の友人、安斎恭介の息子の『行人』である。
コツコツと革靴の音を立てながら森は歩いた。
車に近づくと、森は行人に対し口を開いた。
「ーーすまないねぇ、迎えに来てもらって。」
「いえ、大丈夫です。 後ろ 乗ってください。」
行人は拳から出した親指を後ろに向けて、森を後部座席に案内する。
森は案内されるままに後ろのドアを開けて車に乗り込むのであった。
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