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秋が扉を開けると、そこには細い目をさらに細めて秋を見つめる “狐” の様な男性がいた。
狐の様な男の後ろには 行人がいつものヘラヘラ(ニコニコ)した顔で秋を見つめている。
いつもなら秋は行人の顔がすぐに目に入るのに、その時は目の前の男しか見えず、秋は その人を目の前にして固まっていた。
(なんだ? この異様な空気は?)
「ーーこんにちは。」と男性が声を発した事で 俺は、我に返った。
「あ、 初めまして。 “僕” は、佐藤秋と言います。こっちは姉の夏です。」
柄にもなく『僕』というワードが出てきてしまい、自分が動揺していると言うことが分かった。
男性は 俺に手を差し出した。
「ーー初めまして。 私、森慎也と申します。」
差し出された手を俺は握った。
(細くて白い、綺麗な指……)
手を離すと、森さんは次に 姉に向けて手を伸ばす。
「は、初めまして……」
いつも聞かん坊の様にガチャガチャと煩い姉も、緊張した面持ちで森さんの手を握っていた。
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