上司と部下

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勤務時間を少し過ぎた社屋は仕事を終えた社員がそろそろ降りて来る頃。 エレベーターを待っていると岡野さんが降りて来た 岡野 潤さん、 時岡課長と同期入社で2人はとても仲が良い。 「おっ、お二人さんお揃いで。まだ仕事?」 「あーそうだ。いいなぁ定時帰り。もうちょい頑張るわ」 「櫻井も残業?」 「はい!私ももう少し頑張ります」 「なに?2人して感じ悪!」 と笑いながら、仕事終わったらいつもの所でね、と手をひらひらさせてエントランスを歩いて行った。 エレベーターの中でスーツの上着を脱ぎワイシャツの袖を折った時岡課長。 このスタイルは戦闘モードだ。 「ただいま帰りました、遅くなりました」 「お疲れ様です」 「お先に失礼します」 自分の仕事を終えた半数以上の人が席を立ち帰っていく。 「おー、お疲れさん」 フーッと息を吐いてパソコンを開いてもう仕事を始めている時岡課長。 私も外出先に持って行った資料を出して纏める作業に入った。 帰社して2時間ほど経った頃には、時岡課長と私だけになった。 机の端にコーヒーとクッキーがポンと置かれた。 ハッとして顔を上げると時岡課長だ。 「ちょっと休憩しろ腹のムシが鳴いてるぞ?」 「エッ!うそー! 聞こえましたか?恥ずかしいー!」 とお腹に手を当てた。 「はははは冗談だ」 「やだ。もぅビックリしました!」 ぷっと頬を膨らませた。 「ごめんごめん。 あんまり怖い顔してるから。何か分からんところでもあるか?」 私の表情を汲み取って声をかけてくれる。 その言葉につい甘えてしまって 「コレはどうした方がいいですか?」 パソコンの画面をカチカチと戻した。 「ん?あー、これはこうして…」 と私のパソコンを指でカチカチとタッチする。 私の背中から腕まくりした時岡課長の腕が伸びて来た。 ドキッ…
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