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正木と香坂は会社での先輩、後輩にあたる。香坂が新卒で入社した会社の指導先輩をしていたのが正木。
一度冗談で正木の事を「先輩」と呼ぶと予想以上に喜んだので香坂はその呼び方を続けている。
営業職だったのでそれこそ金魚の糞のようについて行き、面倒見のいい正木も非常に可愛がっていた。
香坂は結局、営業職が向いていないと気づき数年後に辞職し今は全く違う職に就いているのだがこの関係はずっと続いていた。業種も変わったのになぜかこの関係は途切れなかった。気がつけばもう4年。
なぜかと聞かれれば気が合うからとしか言いようがない。正木は香坂を気に入っていたし、香坂はこの先輩放ってはおけなかった。その香坂の性格を正木も分かってこんな風に愚痴って酔いつぶれている。そんな姿を見せても離れないと分かっているから甘えるのだ。そう分かっていても香坂は突き放すことなど出来ない。
正木にバレないようにため息をついた。
これが、惚れた弱みなのかもしれない。
「あーー!もう!先輩!歩いてくださいよ!」
「ヤダー」
「ヤダじゃないんですよ!重い…」
いつも正木がこうなると分かっているのでいつも正木の家の近くで飲むと決めていた。それでも店から家まで道を成人男性を担いで運ぶのはいつも骨が折れる。それでもこの関係を辞められない香坂は己にため息をつくのだ。
以前はタクシーを使用していたのだが、車の揺れのせいか、一度車内でリバースしてからは色々とめんどくさくなって徒歩で送っている。
いや、こんなことがないと密着など出来ないのでそれを楽しんでいるのかもしれないと香坂はたまに考える。
「マゾかな…俺」
そんな風にふざけて思わないといつか襲ってしまうのではないかと不安なのだ。
この先輩にそんな事を絶対に悟られてはいけない。
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