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…今、何て?
ドン、と心臓が重くなった気がした。そわそわと胸が騒つく。彼女が「当初泊まる予定だったお部屋代はお支払いするから」なんて事を言ってたけど、そんな事はどうでも良かった。
明日、彼女が居なくなる?冗談じゃない。俺の毎日の楽しみは…?
気が付けば、わざわざ机の反対側に回って、彼女を抱き寄せていた。花純にも、したことがないのに。
「えっ、なに…?」
俺の腕の中で彼女は混乱していたが、俺の方がパニックだった。
俺は花純の恋人で、婚約者で。家族にも迷惑がかかるから、絶対に粗相はしないって誓ったのに。
だけど今、腕の中に彼女が居る。
明日から居なくなるなんて言うから、居なくならないで欲しいと思ってしまった。
夏輝がさっき言っていたことは、間違って居なかった。
ーーー彼女のことが、好きだ。
「…まだ、行かないで欲しい」
搾り出すみたいに言ったら、彼女が俺を見上げた。睫毛が揺れて、ホロリと雫が流れる。
「少しだけ、時間が欲しい。そんなに長くは待たせないから」
腕の中で、彼女は「はい」と小さく返事した。
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