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「贅沢だよ、玲は」
「そうだよ。月島、めちゃくちゃ人気あるよ?」
みんなの言う通り、冬真は同学年も後輩も関係無く、学校中の女子から人気があった。切れ長の目と、微笑った時に見える八重歯が堪らないらしい。
4人兄弟の末っ子なんだけど、4人揃ってイケメンらしくて。何だかんだ可愛がられているみたいで、校内のイベントを代わる代わる見にくる兄達も、女子生徒達の噂の的になっていた。
2年の半ばくらいまでは彼女が出来たという噂を何回か聞いたことがあるけど、最近はどうやら申し出を断っているらしい。
「いや、そもそもさ。冬真がこんなサルみたいな女、好きじゃないでしょ」
「いやいや、絶対 好きだよ。授業中もずっと横向いて、アンタと喋ってんじゃん」
「無い無い。選びたい放題なのに、敢えて私を選ぶことは無いよ」
そう言うと、失礼なことにそこに居た全員が「確かに」と納得していた。
「玲がその見た目じゃなかったら、今ごろイジメられたりしてそうだもんね」
「そんな少女漫画みたいなことある?」
「…アンタ、女の僻みをナメすぎ」
ハア、っとまた溜め息を吐かれて。
「て言うかさあ、あのイケメンにあの距離で居られて、トキメいたりしたいの?」
「トキメ…?」
「そもそもさあ、好きな人できたことある?」
私は、物心ついた時から、何かしらのスポーツに没頭していた。どうやったら速く走れるかとか、どうやったら筋力が伸びるかとか。そんなことばかり考えて過ごして来た私が、色恋沙汰に興味を持ったことなんてあるはずが無い。
「それは、追い追い。自然と出来るんじゃない?」
そう言ったら、3度目の溜め息を吐かれた。
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