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どうしようかと思っていると、向こうが沈黙を破った。
「じゃあ、試してみるか?」
「…何を…?」
「恋人っぽいこと」
「へっ?」
素っ頓狂な声を上げたら、冬真が私の頬に触れた。暖かくて、大きな手。すっぽりと、頬が温もりに包まれた。
そのままテーブル越しに引き寄せられて、グッと目を閉じる。
唇に、柔らかいものが触れた。
うわ、ヌルッとした!
…でもアレ?思ったよりもパサパサ…?
恐る恐る目を開けると、必死で笑いを堪えていて。触れたのは、私の食べかけのハンバーガーだった。ケチャップが、たっぷりと唇に付着している。
「さ!最低ッ!」
そう言ってハンバーガーを奪い取ると、冬真は笑い転げた。
「面白ェ!素直すぎ!」
「ホンットに趣味悪い」
「今後 騙されねーように教えてやってんだろ?感謝しろよ、」
やっぱりコイツは私を面白がってるだけだ。好かれてるなんてあり得ない。
そして私も、好きになるなんて絶対無い。良い奴だと思うし、友達としては大好きだし、ずっと仲良くして欲しいけど。
恋人っぽい雰囲気になんかなれない。コイツは親友だ、と口についたケチャップを拭きながら再確認した。
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