2129人が本棚に入れています
本棚に追加
/46ページ
金曜日。また放課後にアルバム作りで集まっている時の事だった。
ある程度、写真の厳選が終わって、「担任に提出しに行こう」という話になった。
「ね、玲が持って行ってよ」
「えっ、何で私?」
「だーって。一昨日、愛しの月島とのデートで抜けたじゃん。あの後も私達、遅くまでやってたんだからね?」
「べ、別に愛しく無いよ!デートでも無いし!」
そう言って否定したけど、確かに先に抜けたのは事実で。渋々、写真の入った封筒を預かって、私は教室を出た。
担任は化学教師。いつも職員室では無く化学準備室に居る事が多いので、私はみんなと逆方向。夕焼けで紅く染まり始めた階段を、4階を目指して登った。
4階に着いた時、人影を見つけた。女子生徒と男子生徒の2人組。咄嗟に、ちょっとしたスキンシップを図っているのでは、と脳内で予測した。
関わり合いにならないように脇をすり抜けようとしたけど、思わず足を止めてしまった。
そこに居たのは、隣のクラスの女子生徒。と、冬真だったから。
冬真は壁に背中を付けて立っていて、彼女は腕を冬真の首に回していた。2人はピッタリと唇を合わせている。
「わっ…!」
思わず声を出して、封筒をドサリと落とした。慌てて屈んで、散らばった写真を拾う。
「…サル、」
「ご、ごめん、邪魔した!ごめん!」
写真をかき集めると、揃えもせずに封筒に押し込んで。
「ごゆっくり!」
1階まで聞こえてるんじゃないかってくらいの大声で叫ぶと。本当は化学準備室へ行きたかったんだけど、広く空いている方向へ。階段へ進み、駆け上がった。
重たい鉄の扉を押し開けて、屋上に出る。
外は、秋の匂いがした。
最初のコメントを投稿しよう!