四男・冬真

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金曜日。また放課後にアルバム作りで集まっている時の事だった。 ある程度、写真の厳選が終わって、「担任に提出しに行こう」という話になった。 「ね、玲が持って行ってよ」 「えっ、何で私?」 「だーって。一昨日、愛しの月島とのデートで抜けたじゃん。あの後も私達、遅くまでやってたんだからね?」 「べ、別に愛しく無いよ!デートでも無いし!」 そう言って否定したけど、確かに先に抜けたのは事実で。渋々、写真の入った封筒を預かって、私は教室を出た。 担任は化学教師。いつも職員室では無く化学準備室に居る事が多いので、私はみんなと逆方向。夕焼けで紅く染まり始めた階段を、4階を目指して登った。 4階に着いた時、人影を見つけた。女子生徒と男子生徒の2人組。咄嗟に、ちょっとしたスキンシップを図っているのでは、と脳内で予測した。 関わり合いにならないように脇をすり抜けようとしたけど、思わず足を止めてしまった。 そこに居たのは、隣のクラスの女子生徒。と、冬真だったから。 冬真は壁に背中を付けて立っていて、彼女は腕を冬真の首に回していた。2人はピッタリと唇を合わせている。 「わっ…!」 思わず声を出して、封筒をドサリと落とした。慌てて屈んで、散らばった写真を拾う。 「…サル、」 「ご、ごめん、邪魔した!ごめん!」 写真をかき集めると、揃えもせずに封筒に押し込んで。 「ごゆっくり!」 1階まで聞こえてるんじゃないかってくらいの大声で叫ぶと。本当は化学準備室へ行きたかったんだけど、広く空いている方向へ。階段へ進み、駆け上がった。 重たい鉄の扉を押し開けて、屋上に出る。 外は、秋の匂いがした。
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