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四男・冬真
「懐かしい~!コレ、1年の遠足!」
「こっちはオリエンテーションだね、」
「アンタこれ白目じゃん!」
高校3年生になり、学年の有志数名で、卒業アルバムを作ることになった。放課後みんなで集まって、掲載したい写真を今まさに選んでいるところだ。
「て言うかさ、アンタ達まだ付き合ってないの?」
「えっ、誰のこと?」
「トボけるな!月島と、玲だよ!」
ビシッと、1枚の写真を目の前に差し出された。それは修学旅行の一場面。他のクラスの女子達が集合してる後ろに、クラスメイトの月島 冬真と私が手を繋いで歩いているのが小さく写り込んでいる。
「手、繋いでるよね?」
「ああ、それ?それは私が道を間違えそうだったから、手を引かれただけだよ」
「じゃあこっちは?」
次に見せられた写真は、お土産屋さんが写っていた。私がご当地のキーホルダーを手に取っている後ろに、覆い被さるように彼が立っている。
「バックハグだよね、これ」
「違うよ。私が見てる棚にあるやつが見たかったんだって」
「またそんな言い逃れを…!」
「て言うか、端に写り込んでるだけなのに、よく見つけて来たね」
私が感心すると、向かい合わせた机4つを一緒に囲んでいるアルバム委員達が、揃って溜め息を吐く。
「…何が不満なの?」
「…不満?」
「月島に不満があるから付き合わないんでしょ?」
「はいい?」
月島 冬真。高校から一緒になって、1年から3年間同じクラス。私の苗字は辻本だから、出席番号順では絶対に前後で。すぐに意気投合して、いつも一緒につるんでいる。
でもそれは、愛情ではなく明らかに友情。その証拠に、アイツは私を「サル」と呼ぶ。引退までソフトボールに打ち込んで、こんがりと焼けた肌。紫外線で退色した痛んだ茶髪は、今もまだベリーショートだ。ただでさえ男勝りな性格なのに、名前も「玲」。サルと呼びたくなるのも、分かる気がする。
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