四男・冬真

1/8
2129人が本棚に入れています
本棚に追加
/46ページ

四男・冬真

「懐かしい~!コレ、1年の遠足!」 「こっちはオリエンテーションだね、」 「アンタこれ白目じゃん!」 高校3年生になり、学年の有志数名で、卒業アルバムを作ることになった。放課後みんなで集まって、掲載したい写真を今まさに選んでいるところだ。 「て言うかさ、アンタ達まだ付き合ってないの?」 「えっ、誰のこと?」 「トボけるな!月島と、(あきら)だよ!」 ビシッと、1枚の写真を目の前に差し出された。それは修学旅行の一場面。他のクラスの女子達が集合してる後ろに、クラスメイトの月島(つきしま) 冬真(とうま)と私が手を繋いで歩いているのが小さく写り込んでいる。 「手、繋いでるよね?」 「ああ、それ?それは私が道を間違えそうだったから、手を引かれただけだよ」 「じゃあこっちは?」 次に見せられた写真は、お土産屋さんが写っていた。私がご当地のキーホルダーを手に取っている後ろに、覆い被さるように彼が立っている。 「バックハグだよね、これ」 「違うよ。私が見てる棚にあるやつが見たかったんだって」 「またそんな言い逃れを…!」 「て言うか、端に写り込んでるだけなのに、よく見つけて来たね」 私が感心すると、向かい合わせた机4つを一緒に囲んでいるアルバム委員達が、揃って溜め息を吐く。 「…何が不満なの?」 「…不満?」 「月島に不満があるから付き合わないんでしょ?」 「はいい?」 月島 冬真。高校から一緒になって、1年から3年間同じクラス。私の苗字は辻本だから、出席番号順では絶対に前後で。すぐに意気投合して、いつも一緒につるんでいる。 でもそれは、愛情ではなく明らかに友情。その証拠に、アイツは私を「サル」と呼ぶ。引退までソフトボールに打ち込んで、こんがりと焼けた肌。紫外線で退色した痛んだ茶髪は、今もまだベリーショートだ。ただでさえ男勝りな性格なのに、名前も「(あきら)」。サルと呼びたくなるのも、分かる気がする。
/46ページ

最初のコメントを投稿しよう!