1章:魔法少女ロイネちゃん誕生

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「私が行くよ、ちゃんと!」 「あのね、音色ちゃん。学校のどこかにこれが落ちてたら、私本当に音色ちゃんのこと嫌いになりそうだから。私が自分で捨てに行くよ」 「ああ……」  いちごちゃんは早足で、もちろん遅いのだが、それでも早足で教室から出て行ってしまった。力なく椅子に座りなおした音色の肩を、ノリタケがぽんぽんと叩く。 「どんどん嫌われていくね」 「やめてくれ……」 「それにしても、猫缶? なんで?」 「いちごちゃんにほめられたくて、猫に餌をあげたら無責任って怒られたんだ。ちゃんとゴミを捨てておくようにも言われたのに……忘れてた」 「音色ちゃんって、いちごちゃんに好かれようと思う行動皆裏目に出ちゃって大変だね?」 「猫に餌なんか普段は絶対にあげないのに!」  嘆く音色を、ノリタケはくすくすと楽しそうに笑った。 「僕は、音色ちゃんのそういうとこもちゃんと大好きなんだけど!!」 「そうかーへー」 「だからパンツ見せてください。お願いしますぅ」  ノリタケは椅子から滑るように降りると、床に土下座を決めた。音色はそれをちらりと横目で見て、はぁ、とまたため息をつく。 「私は美少年だからって理由ですべてを許したりはしない」 「そこをなんとか!」 「はぁ。世の中はくそ、人生はくそ……」  好みの美少年はとんだ変態だった。一度スカートをめくられたときは一発腹に入れてやった。短パン履いていたじゃないかと喚いていたがそういう問題ではないのだ。その後、いちごちゃんのスカートをめくろうと忍び寄っていたので校舎裏に引きずって連れて行き、ぼこぼこにした。もちろん顔には触れずに。その現場は見事にいちごちゃんに目撃されてしまったので、音色は色白病弱美少年を殴り飛ばす最低女だといちごちゃんは思っているし、実際にそう言われた。音色ちゃんの最低、可哀想じゃない、体弱いんだよ! そういちごちゃんは言って、ノリタケを抱き起した。その際に、ノリタケがいちごちゃんの胸に顔を埋めたので、音色はさらにノリタケに暴行を加え、いちごちゃんに本気で軽蔑されるという結果に終わった。 「思い返せば返すほど、世の中も人生もくそすぎる……」 「一体何を思い出したの?」  床の上で正座したまま、ノリタケはきょとんと首を傾げた。腹が立つのだが、美少年なのだ。ここまで整った美少年はそういない、貴重な存在である、どんなに変態野郎であっても。
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