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いちごちゃんが震える声でそれでも言った。逃げて、と言われても。囲まれているのがいちごちゃんじゃなければ。音色の思い人でなければ、ノリタケだってそうしたい。震える足を必死で踏ん張り、ノリタケはひし形人間を睨みつけた。
「いちごちゃんを、返せ!」
じゃんけんのとき以外握ったことのない拳を振りかざし、ノリタケはひし形人間に向かって駆けだした。
「ノリタケ君!」
いちごちゃんの悲鳴めいた声と同時に、ノリタケの手首はひし形人間に掴まれてしまった。
「くっ、このっ、離せ!」
手を振るが、ものすごい強い力だ。ひし形人間は他のひし形に「みゅーみゅー」と聞こえる声で何事か言った。他のひし形人間もうんうんと頷く。
「何を話してるんだ……?」
「みゅー!」
ノリタケは、いちごちゃんのいる輪の中へ放り込まれた。
「うわっ」
「このひし形たち、きっと私たちを連れて行くつもりだよ……どうしよう、助けて、ロイネちゃん!」
「ロイネ?」
誰だそれはとノリタケは首をひねったが、すぐにその答えが目に飛び込んできた。
「おらぁ、ロイネちゃんスーパーキック!!」
緑色のワンピースを着た少女が、ひし形人間に飛び降りながら蹴りをかました。ひし形人間はうなりながら飛んでいく。着地した少女は、帽子をきゅっとかぶり直し、スカートの裾をはらった。
「いちごちゃん、ついでにノリタケも、助けにきたぞ! 魔法使いロイネちゃんだ!」
「きゃー、ロイネちゃん!」
「誰だよ、なんで僕の名前知ってるの?」
ノリタケが眉を寄せると、緑髪、緑目の少女は慌てたように手の中のステッキをぶんぶんと振った。
「そ、それは、私が魔法少女だからだ!」
「魔法少女?」
「そうよ、ロイネちゃんはとっても強い魔法少女なの!」
いちごちゃんはきらきらとした目でロイネちゃんを見つめるが、どうも胡散臭い。
「ロイネさん! 先に行かないでくださいよっ」
また別の少女が空から降りてきた。その子もロイネちゃんと同じ格好をしている。ロイネちゃんはげっとばかりに顔をしかめた。
「おまえ……なんで同じ色なんだよ! なんで緑なんだ! 完全にかぶってるじゃねーか!」
そう、少女とロイネちゃんはほぼまったく同じ格好だった。ただ。
「かぶっていません。ほら、胸を見てください」
「おう、ぺたんこだな。私はもうちょいある」
「ぶっ飛ばしますよ? あなたの胸のマークは△、私のは○です」
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