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いちごちゃんが手を叩いてはしゃぐが、ノリタケはそれどころじゃなかった。ゆらりと立ち上がる。
「世の中はくそ、人生はくそ、だって……?」
それは、そのセリフは!
いちごちゃんに鼻の下を伸ばしていたロイネちゃんは、まずい、という表情になってノリタケを見た。
「魔法少女ロイネ……! おまえの正体は!」
「ええっ、もうばれたんですか、だから言ったんです、馬鹿!」
「誰が馬鹿だ誰が! いや、ノリタケ、きっとおまえが思っている人じゃないよ!」
ノリタケは二人の戯言を無視した。
「あのロイネキックやパンチの切れ味。あのセリフ。間違いない。おまえは……! 音色ちゃん!」
「ええっ、まっさかぁ!」
いちごちゃんがけらけらと無邪気に笑った。ロイネちゃんと金髪少女は苦しそうに顔を見合わせた。ノリタケは全部無視して、続けた。びしっと指をさして。
「そう、おまえは、音色ちゃんのファンでありライバルだな!」
「史上まれにみる頭の悪い人間ですね、この世界にはこういう人が多いんですか?」
「いや、私も今めちゃくちゃびっくりしてるし、ノリタケが馬鹿でよかったなってほっとしている」
金髪少女とロイネちゃんがひそひそとなにやら話しているが、熱くなっているノリタケには聞こえちゃいない。
「おまえ、音色ちゃんに敵うなんて思うなよ! この変な奴らだって、音色ちゃんならもっと早く倒せたぞ!」
ノリタケの言葉に、いちごちゃんはあからさまに顔をしかめた。
「ノリタケ君、ロイネちゃんにひどいこと言わないで。助けてもらったんだよ?」
「くっ……いちごちゃんの心がロイネちゃんとかいう緑の魔法少女に奪われてしまう! くそ! ロイネちゃんなんかより、音色ちゃんの方が可愛いし強いのに!」
わなわなと震えるノリタケを横目に、ロイネちゃんは金髪少女に囁きかける。
「なあ、アオ? 私は喜んでいいのか、悲しんだ方がいいのか、どっちだと思う?」
「私にもわかりませんけど、とりあえずもう行きましょうか」
「そうしよう」
「こらぁ、聞いてるのか! このくそ緑!」
「うるせえ、もう去る! 悪は滅したから去る! 世の中はくそ、人生はくそ! さらばだ!」
「さらばです」
「こら、そのセリフ使うな! 音色ちゃんからぱくるなああああ!」
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