2章:ロイネちゃんと遠足

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 アオは音色を魔法少女にしたことを後悔しながら首を横に振る。そして足を止めて、近くのベンチに腰を下ろした。先日、アオと音色が出会ったベンチだ。音色は何か言いたそうだったが、だまってアオの隣に座った。 「異界人がこの世界の美少女や美少年を狙う理由ですが、先日も言いましたけど、趣味ですよ。観賞用です」 「か、観賞用!? 連れて行って飾ったりするのか!? 人間を!」  音色は動揺して叫んだ。 「そうですよ。でも今はまた別の理由もあるようです」 「別の理由?」 「はい。今までは自宅に飾るためにさらっていた美少女、美少年たちを今は闇の帝王に貢いでいるらしいんです」 「はー? 闇の帝王?」  あまりにも厨二病チックなワードに音色は少し引いていたが、アオはこぶしを握って立ち上がった。音色を振り返り、力強く言う。 「そうです。闇の帝王。彼は定期的によみがえり、すべての世界を掌握しようとするのです」 「定期的によみがえっちゃうの?」 「はい。今回は20年ぶりですね。20年ぶり……48回目くらい?」 「頻繁によみがえってんじゃねえよ!!」 「よみがえる、といっても同じ人物ではないんですよ。だからそれぞれ目的が違ってややこしいんです。前回の闇の帝王は私たちラシャゴアカオイ王国の人間を支配し、魔法少女や魔法使いを生み出す力を独占するために闇の帝王になったと言ってましたが……」 「今回はなんなの?」 「よくわからないのですが、美少年や美少女を集めているみたいです。たぶん、今回の闇の帝王はこの世界出身の人間でハーレムを作ろうとしているんだと思います」 「じゃあ、ひし形人間は闇の帝王の手下ってことか……絶対に赦さん!」  音色は勢いよく立ち上がった。アオはいつになく燃えている音色を頼もしく思うが、 「私のいちごちゃんをハーレムなんかに入れてたまるか!」  続く言葉に脱力したのだった。
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