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「はぁ……本当にいちごちゃんのことばかり。もういいです。帰りましょう」
アオはため息交じりに言うと、はいぽん、といつもの通り両手を合わせた。あたりに煙が立ち込め、それが消えるころには金髪の美少女が姿をけし、代わりに美しい白猫が現れる。
「今日の夕飯なんだろうな」
「にゃー(私には関係ないですけどね)」
猫の姿になると人の言葉を話せなくなるのが難点だ。一人と一匹は再び歩き出した。
音色が魔法少女になった日、行く場所がないとアオが言ったので、家に連れて帰ったのだ。音色が猫を拾うなど今までなかったことだから、家族は大変に驚いたが、だからこそ飼うことに賛成してくれた。その翌日、音色は猫を抱いていちごちゃんを待ち伏せし、「飼うことにしたから無責任じゃないよ」と告げたのに、いちごちゃんは悲しそうな顔をして「ノリタケ君が音色ちゃんのせいでちょっと変だよ」とだけ言ってきた。ノリタケが変なのはもともとである。以来、音色といちごちゃんは口をきいていない。辛いことを思い出してしまった音色は、先ほどまで夕飯について考えていたのにどんと落ち込む。
「はぁ、世の中はくそ、人生はくそ……おにぎりで死ぬのもいいかもしれないな」
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