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「俺、将来姉ちゃんと結婚するつもりなんだよな、どう思う?」
「にゃ、にゃー」
この世界の、この国では姉弟で結婚できないのではないかとアオは首をかしげる。
「俺と姉ちゃんは本当のきょうだいじゃないから、結婚できるんだぞ」
「にゃ!?」
初耳だった。アオはその目を大きく見開いた。
「姉ちゃんのパパと、俺のママが結婚したから、俺たちはきょうだいになったんだよ」
「にゃ、にゃー……」
では、そのパパは一体どこにいるんだろう?
「姉ちゃんのパパは、俺が四年生になる前にいなくなっちゃたんだよ」
「にゃ……」
台所の方から、音色の「うわ、あっつ!」などという悲鳴が聞こえてくる。アオは呆然と、ただ何を思えばいいかわからず、桔平を見上げ続ける。桔平が四年生になる前ということは、今年の話なのだ。いちごちゃんが中学生になってから音色が変わってしまったと言っていたが、これが原因なのではないだろうか。
「姉ちゃんはパパの代わりに、俺とママを守るつもりでいるんだ、だからすごく強いんだよ、姉ちゃんは」
「にゃー」
音色の強さは、アオがよく知っている。本来なら、魔法少女として共に戦う際、音色ではなくアオが主体になるべきなのだ。なのに、音色はほぼ物理とはいえ一人で敵をなぎ倒していく。アオの力など必要ないくらいに。
「でも、俺だってそのうち大きくなるし、いつかは姉ちゃんの背も抜くし、だから、そしたら俺だって姉ちゃんを守れると思うんだ!」
「にゃー……」
そうだとしても、それと結婚はあまり関係ない気がする。弟で良いと思う。アオはいつか人間のときに桔平に会って、それを伝えようと思った。
でも、そんなの、アオには関係ないんじゃないかという考えが頭をよぎった。弟でもいい、でも夫でもいいんじゃないだろうか、そんなの音色と桔平の勝手だ。ちくちくとどこかが痛んだ。
「俺、姉ちゃんに本当に恋人ができたのか訊いてくる!」
「にゃー」
桔平がどたどたと短い廊下を走っていくのを見送ってから、アオはまたエサ入れに頭を突っ込んで、無心でがっつき始めた。
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