2章:ロイネちゃんと遠足

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「……音色ちゃんは、いっつもいっつも……私のこと、嫌いなんでしょ」 「えっ? な、なんで!? そんな!」 「だから、そうやって私を馬鹿にするんでしょう!」 「ち、違うよ、違う!」 「私だって、音色ちゃんのことなんか……!」 「あー、ダメです! そこまで言っちゃダメです、いちごちゃん、ほら落ち着いて、あっちでお友達が心配そうにしていますよ、そこまで言っちゃダメです!」  アオがさえぎったおかげで、決定的な言葉を音色は聞かなくて済んだ。だがしかし、同じことではあるのだ。続きの言葉が既にわかってしまっている時点で。いちごちゃんは静かに深呼吸すると、回れ右をした。 「私、天然って言われるの、嫌いなの」  それだけ言い残して、いちごちゃんは早足で友達のもとへ行ってしまった。 「う、うあああ、うあああああああ」  ぽろぽろと涙をこぼし、音色は芝生の上に座り込んだ。 「嫌われた、本当に嫌われたー!」 「あなたという人は……本当に単純な情緒しかわからない人ですね。褒めればいいってものではないんですよ」 「うう、うう……いちごちゃんが天然って言われるの嫌いだって知らなかった。長い付き合いなのに……いっつも天然って言われても違うよってニコニコしてたから」 「友達に言われても許せるけど、ムカつく人に言われたらやっぱり怒るんじゃないでしょうか」 「冷静に言うな! ふえーん」 「やめてください」 「やめてくださいってなんだよ、普通泣かないでくださいとかだろうが!」 「はいはい、泣かないでください、立ち上がってください、そろそろ校長先生が朝礼台にあがりますよ」  音色はアオに腕を引っ張られて立ち上がった。 「世の中はくそ、人生はくそ……」  お決まりのセリフを吐きながら。出発前から汚れてしまったお尻を払うのだった。  校長の話のせいで、炎天下の中一時間も出発式は行われ、しかし一人も倒れることなく――山内ノリタケは日陰に保健の先生と一緒にいたので倒れずに済んだ――、一年生は遠足に出発することになった。  みんなワイワイきゃっきゃ言いながら校門を出ていく。目的地は歩いて二時間ほどで登れる山だ。音色がアオと一緒にだらだらと校門を出ようとしたとき、肩をぽんぽんと叩かれた。振り向いた頬に人差し指が刺さる。ノリタケだったので、すねに軽くケリを入れた。 「痛いっ」 「うざいんだよ。何か用?」
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