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「おっしゃる通りです。お腹ぺこぺこのところを安い猫缶でほだされてしまいました」
「中学生のお小遣いからしたら全然安くないんだよ!」
はぁ、とアオはもう一つため息をついた。
「それに。あの決め台詞」
「あれか、世の中はくそ人生はくそ、皆死ね」
「あんなの、正義の味方である魔法少女のセリフじゃありません……!」
「そうは言っても、あれが一番やっつけてやるって気持ちが入るんだよな」
「最低です、最低! もう嫌……」
アオは顔を両手で覆ってしまった。いちごちゃんには劣るとはいえ、アオも大層な美少女である、こうなれば音色は慌ててしまう。
「ご、ごめんごめん、次の機会があれば改めるよ」
「もうだめなんです! もうマジカルステッキはあなたのあのセリフを覚えてしまいました!」
顔を上げて噛みつくようにアオは言った。猫の姿だったらシャーシャー言ったかもしれない。
「ご、ごめん、そうなのか……」
「先が思いやられます……」
「ごめんごめん。ところで、アオは今からどこに行くんだ? 私は学校だけど」
話を変えようとしたのに、アオはぎりぎりと歯ぎしりをした。
「どうしてそんなに、察しが悪いんです。制服、あなたと同じものを着ているでしょう。私も学校に行くんです」
「ええっ、学校に!」
「だから、耳と尻尾は隠しましたよ。それから、名前も偽名があります。この姿のときの名前は青目夕(あおめゆう)です、お間違いなく」
何故か得意げに、アオはぺたんこの胸をそらした。
「でも、なんで登校するんだ?」
「あなたを見張るためです」
「私を? なんで」
「うっかり口を滑らして、自分がロイネちゃんだとか言い出さないか心配で。それに、おにぎりを勝手に食べて変身されても困りますし……」
「信用ないなあ」
「あと、暇だからですね」
「それが一番の理由か、もしかして!」
違います、と夕は言い切って、再び歩き出した。音色は絶対そうだ、とぶつぶつ言いながらもその後に続いた。
学校に着いて、夕は職員室に行くので、と下駄箱のところで音色と別れた。転入初日から遅刻ということになるようだが、それでいいのだろうかと音色は首をひねった。
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