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少女は一瞬だけ、【めるめ】と呼ばれた女性の完全に整った豊満な体に視線を這わせると、何事もなかったように女性の顔を覗いた。
「暇なの。あれ、できたぁ?」
「はい、完了しております」
「じゃあ、ばら撒いちゃってぇ」
「……あの、本当によろしいのでしょうか?」
少女の遠慮がちな声に。
「やって。心からの愉悦を求める者の下に、それが届くようにして」
有無を言わせぬ【めるめ】の言葉。
少女は刹那むっつりと黙ったが、やがて小さく頷いた。
「枚数は本当に1040枚でよろしいですか? 足りなくなると思いますが」
「そしたらそのとき足せばいいじゃない」
「……左様で。了解致しました」
少女は一礼すると、闇中へ消えた。
(……まったくいくら暇だからといって、リンチェス(支配種族)に【エデンカード】のレプリカを配るなんてどうかしている。……まあ悪魔なんてみな、どうかしているものか)
(さてカードをばら撒く世界は放置世界がいい。その上で一番都合のいい世界を適当に選ぼうか。……遅かれ早かれ神には見つかる。もしかしたらすぐにでも。……神の連中もいい迷惑だろうな)
少女は意地の悪い笑顔を浮かべて、闇の中を進んだ。
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