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最初にその存在に気付き祭りを予感したのは、外郭の側溝を走るドブネズミ共だった。
あの高い塔、その下の大いなる城下、城下を取り囲む外壁、外壁の外には普通の世界。
その外壁との間の下水道を走り回るドブネズミ共。求める者共が一番最初に感づく。
心からの愉悦を求める者たち。――それは必然だった。
狂喜したりしなかったり。しかし起こりうる愉悦に、にやりと笑うのは全員が共通であった。
「……便利ね。さてどこまで関わろうかしら」
「ほうほう。面白いお祭りに参加できたなあ」
「これ見てこれ! 私たちますます無敵じゃん!」
「私のも見ろよ! これでますます無敵だな私たち!」
「――さてどれだけの金に繋がるか」
「人生本当に飽きない。本当に」
「すげえええええええええエロゲが3D化したああああああああああああああ」
みなが楽しむ中で、浮かない表情をする者たちもあった。
せっかくの祭りで仏頂面を浮かべる理由なんて三つしかない。元々そういう顔であるか、友達に無理矢理付き合わされたか、それか見回りの業務であるかだ。
「……まったく、本当に面倒なことをしてくれますね、悪魔というやつは」
「本当にね。しかし監視対象外である放置世界の異常に気付けたのは幸いだった、僥倖と言うしかない。……まあ面倒を処理する我々は、たまったものじゃないけれど」
「そうですね。本当に面倒くさい……」
お祭りの見回り、特定者の補導がお仕事。
人型を模った男女のそれらは、気だるげな重い表情でため息を連発しながらに、その世界に降臨した。
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